オープンユニバーシティにおける30年間のアクセシブルな教育リソース(翻訳)

2019/10/04

DAISY Consortiumのホームページに掲載されました以下の記事を翻訳しましたので、公開いたします。

30 Years of Accessible Educational Resources at the Open University

今年はオープンユニバーシティの50周年にあたり、英国および世界157か国で、柔軟で革新的な教授法と世界をリードする研究を提供している。また、過去30年間でプロセスが非常に進化したアクセシブルな学習リソースを提供している学部の30周年でもある。

障害がある学生向けの音声は、もともと録音され、オーディオカセットで配布されていた。 当初、ボランティアの読者は自分の家でカセットレコーダーを使用していたが、録音条件や外部ノイズ等の様々な固有の問題を抱えていた。 1989年、オープンユニバーシティは英国王立盲人協会(RNIB)と共同で、C.J.スミスオーディオレコーディングセンター(オープンユニバーシティのメインキャンパス内)を開設し、より制御された環境で音声を録音できるようにした。 カセットが高速でスプールされたときに、章、セクション、サブセクションごとのナビゲーションを支援するために、トーンインデックス(音による見出し)が追加された。 ただし、音があっても、カセットのコンテンツをナビゲートする際に、利用者をイライラさせる可能性がまだあった。大きな書籍は20個分のカセットとして提供される必要があり、また正しいカセットを選択された場合でも、ドキュメントの必要なセクションに達するために、非常に時間のかかるプロセスであった。

オープンユニバーシティは、リードアウトと呼ばれる社内で開発されシステムをもって、1998年に障害を持つ学生にデジタルオーディオの提供を開始した。ドリームというソフトウェアパッケージにより、音声をコンピューターに録音することができた。録音が完了すると、学生に配布可能な「リードアウト」と呼ばれる最終的なソフトウェアパッケージが作成された。 リードアウトシステムは、高品質のデジタルオーディオ録音を提供し、学生がドキュメント内の個々の見出しまたはページに直接移動できるようにした。 しかし、ドリーム・リードアウトシステムには多くの制限があった。 録音は、適切にフォーマットされた.htmlファイルからしか作成できなかった。このファイルは、その時点では常に利用可能ではなかったため、すべての教材のリードアウトパッケージを作成することは不可能であった。 また、システムは画像を処理できなかったため、リードアウトを使用していた学生は、元のドキュメントにあった写真、図、グラフなどを見ることができなかった。学生に配布された完成版のリードアウトパッケージは、CD-ROMのみから再生が可能であった(コピーはできなかった)。また、音声はリードアウトソフトウェアでしか再生できなかった。 その結果、ソフトウェアを使用できなかった学生でも音声を聞くことができるようにすべてのリードアウトパッケージに対して、オーディオカセットが同時に作成されていた。

2008年に、オーディオ録音センターは、DAISY形式でオープンユニバーシティモジュールマテリアルの音声バージョンの作成を開始した。これにより、ドキュメントのさまざまな部分に簡単に移動またはスキップできるナビゲーション構造などの追加機能が可能になった。 DAISY録音図書は、専門のソフトウェアパッケージを使用したコンピューターや、特注のモバイルDAISYプレーヤー、または標準の.mp3プレーヤーによって音声を容易に再生できる柔軟性を提供した。

DAISYシステムは柔軟性が高く、オープンユニバーシティのコース教材をさまざまな方法で作成できるようにしている。オープンユニバーシティの最初のDAISY 録音図書は、ボランティアが実際のペーパーの書籍を読んで録音し、文書の見出しとページ番号はナビゲート可能であった。 ドキュメントに関連付けられている実際のテキストは、コンピューター画面に表示されなかった。このタイプの「音声のみ」のDAISY 録音図書は、テキストの電子版が利用できない試験の録音にのみ使用されている。

現在作成されるDAISY 録音図書の大部分は、パソコンの画面に表示される原本の素材に関連するすべてのテキスト、写真、表などを有し、ボランティアは画面上で直接テキストを読んでいる。 PDF、EPUB、またはWord形式のドキュメントは、モジュール化されたWebサイトから取得され、Dolphin Publisherソフトウェアを使用して録音プロジェクトを設定するために使用され、正しい形式のHTMLファイルに変換される。

人間による音読を録音できることに加えて、Dolphin Publisherソフトウェアは合成音声も生成できる。これは、DAISY 録音図書の制作をスピードアップするための画期的で便利なオプションである。 ドキュメント全体として合成音声を使用して作成することも、「ハイブリッド」バージョンを人間の音声と合成音声の混合を使用して作成することもできる。 ただし、現在、合成音声は単純なテキストにのみ使用可能である。科学用語と表記法を含むテキストでは使用するのが非常に難しく、数学的テキストの最も基本的なもの以外にはまったく使用されない。 合成音声は、オープンユニバーシティコース教材の音声バージョンの作成を高速化するための非常に便利なツールであるが、学生からの圧倒的なフィードバックとして、常に人間の声を好むということになっている。

音声はもともと、学生に録音カセットで届けられていたが、これは、郵便で届けられる1冊の本に文字通り数十個ものカセットを送り届ける必要性があった。 これは、最初はリードアウトシステムであったがCD-ROMに移行し、その次にDAISY 録音図書に移行した。ただし、CD-ROMにコピーできるDAISY録音図書は1つだけであった。 その結果、ある時には、毎年最大60,000枚のCD-ROMが作成され、学生に発送された。 その後、モジュールの素材がDVD-ROMにディスパッチされると、ディスクの数は約6000枚に減った。 これにより、一つのディスクを使用して、複数のDAISY 録音図書を含むモジュール全体を配布できるようになった。

DAISY Talking Booksは、特殊なDAISYプレーヤーを使用してアクセスしている学生のために、まだCD-ROM、USBスティック、あるいはSDカードで配布されているが、2015年以降、学生の大多数はモジュールWebサイトから直接DAISY 録音図書をダウンロードしている。つまり、利用可能になり次第、モジュールの資料をディスクにコピーされ、発送されるのを待たずに、それらを入手している。 それはまた、初めて、DAISY 録音図書が障害のある学生だけでなく、障害のない学生にとっても学習支援として利用できることを意味する。

2019年5月、現在勉強している24,000人のオープンユニバーシティの学生が障害を公表し、過去12ヶ月間に7,255人の学生がDAISYコンテンツを要請した。現在、DAISYのコース教材は120のモジュールで利用でき、これらのモジュールは、オープンユニバーシティの全学生の81%(約100,000人)が研究しているトピックをカバーしている。

合計86人のボランティアリーダーがレコーディングに貢献し、1か月に平均170時間、つまり年間2,044時間の読書を行っている。毎年約800の新しいDAISY 録音図書が作成されており、その約3分の1は人間の音読によって作成され、3分の2は合成音声を使用して作成されている。

DAISY 録音図書は、今後もしばらくはデフォルトのオーディオ形式になるが、DAISY 録音図書と同じ機能を持つEPUB形式が利用可能になりつつある。

これらのEPUB形式はより「主流」になり、DAISY形式で現在利用できるよりもはるかに多くの素材にアクセスでき、DolphinのEasyReaderなどのプレーヤーは、オーディオレコーディングセンターによって特別に作成された素材だけでなく、 特別な処理とフォーマット化を経ていない素材を再生できるようになる。

本記事は、オープンユニバーシティで開催された展示から、オープンユニバーシティレコーディングセンターの30周年を祝うために掲載されたものである。 このテクニカルなチャレンジを共有してくれたAlan Marlow氏に感謝したい。

(R.M.)