DAISYプラネット 2018年7月号

2018/12/11

DAISYコンソーシアムのニュースレター「DAISYプラネット2018年7月号」が配信されました。http://www.daisy.org/planet-2018-07
以下、概要を日本語にしました。

トピックは以下の4つです。
(1)どのリーディングアプリが自分に最適か知っていますか?
(2)デジタルボイス・アシスタントを利用し、オーディオブックを作る?
(3) DAISYコンソーシアム、CNIB変化の世紀賞(CNIB Century of Change Award)受賞
(4)無料のリーディングシステム…. 話が良すぎない?


 

(1)どのリーディングアプリが自分に最適か知っていますか?

リーディングアプリとOSシステム、支援技術には膨大な組み合わせがある。そんな中、誰かの個人的な嗜好にあったリーディングアプリを選ぶことは非常に難しい。さらに、Eブックの規格適合の複雑さを考慮に入れると、特にアクセシブル機能についての規格は複雑なので、最適なリーディングアプリの選択は不可能に思える。
多くのリーディングアプリがアクセシブル機能を備えているということはいいことだが、どのリーディングアプリとどの支援技術のコンビネーションが良いかを知ることは難しい問題である。
私たちは「インクルーシブな出版」のウェブサイトで、リーディングアプリのアクセシブル機能の最新レビューを行っている。このレビューでは、Eブックの機能と共に支援技術の構造的なテストの結果をまとめている。一定期間で更新されるこうしたレビューはボランティアの素晴らしいチームが集めたデータをもとにしている。テストの全記録はepubtest.orgで公開されている。
このレビューに関して、私たちは既に好感触なフィードバックを受け取っている。このレビューの情報は個人のユーザーや教育関係者、とりわけアプリ製作者にとって有益なようだ。私たちのテストの結果から割り出された問題点に気づき、次のアプリのリリースの時にその点を直すことができるからである。
レビューにあるテスト結果はその発表時には正確なものであるが、アプリは常に更新されていることは認識してほしい。アプリ製作者がこのテストの結果をもとにそのような問題点を解決していることもある。http://epubtest.org/testsuite/accessibility/で常に最新のテスト結果を確認できる。
この活動は素晴らしいボランティアたちによって支えられているが、ボランティアの数は十分ではない。このテストのやり方や、あなたがどのようにこの活動に関われるか、といった情報の詳細はhttps://inclusivepublishing.org/treで確認してほしい。

(2)デジタルボイス・アシスタントを利用し、オーディオブックを作る?

ここ数年、図書館のサービス提供に関して二つの重要なトレンドがある。一つ目は、オンラインのサービス提供であり、CDの貸し出しに比べてより早く効率的な方法をとれるようになった。2つ目は、主流の技術の利便性を追求する熱意である。
この二つのトレンドが重なりあう領域というのが、amazonのAelxaやGoogle Assistant, AppleのSiri, MicrosoftのCortanaといったデジタルアシスタントの利用である。こうした技術はデジタルシステムに自然な言語のインタフェースを与えるものであり、利用者が話しかけたり、文字を入力したりすると、機械がそのリクエストを解釈し、指示された反応を示すのである。この技術のおかげで、音楽やラジオを聴いたり、電灯を操作したり、あるいは家を適温に保つ、といったことが簡単な声による指示でできるようになる。
本や新聞、雑誌を読み聞かせるというのは、この技術が次に行きつくステップであるように見える。実際に、いくつかの国では既にAudibleやGoogle Play, Appleのオーディオブックをこうしたデジタルボイス・アシスタントからアクセスでき、声で指示をだすだけで、本を選び、プレイバックし、チャプターやタイムインターバルから検索できる。いくつかのプラットフォームでは、本を買うこともできるのだ。
この技術を受け入れるにあたって、DAISYコミュニティでは何が起きているのだろうか?
少なくとも、何人かのDAISYのメンバーはこうしたデバイスのサービスとその情報提供の可能性に興味を持って、会話のトピックにしていた。。そのため、この程、メンバーがどれくらい興味を持っているか調査するため、アンケートを行った。その結果、知識を共有でき、またより的確な技術開発をサポートすることができる。
アンケートを返信してくれた16のDAISYメンバー団体のうち、7団体がこうしたスマートボイスアシスタントを利用したソリューションに積極的にかかわっており、他の団体もその開発を予定しているか、興味を持っているかであった。積極的にかかわりを持つ団体の中でも2つのグループは2018年現在、今年中にサービスを開始することを予定している。他の5団体も2019年にソリューションを開始するつもりだ。
旧来の図書管理・図書移動の技術と、革新的なクラウドサービスのイノベーションや第三者のAPIの混じりあう状況は、組織内と組織外の開発者・委託業者の玉石混交となる。この新しい領域にアプローチするにあたって、DAISYコミュニティにはいくつかの新しいスキルが必要となる。
プラットフォームを提供する会社側も学び、適応していかなければならないことも明らかである。それぞれ別々のソリューションがオーディオコンテンツの移動を可能にしているが、時にそうしたソリューションは特殊なファイル構造である必要であることがある。そしてそのファイル構造は図書館で現在使われているもの(例:MP3のビットレートなど)とは違う可能性が大いにある。また現段階では、どのプラットフォームでもDAISYやEPUBからオーディオを取り出すには複雑な方法を採らなければならない。いくつかの会社の契約条件は図書館の将来的に提供するサービスと相いれないものである。というのも、その契約条件はユーザー情報の提供を制限しており、図書館とその利用者との関わりを著しく阻害するものである。こういった問題は解決されなければならないだろう。
ボイスアシスタントサービスは、クラウドを利用したTTS(Text-to-speech)をサポートし、中にはSSML(Speech Mark Up Language)を使えるものもある。これはテキストから音声へのダイナミックな変換を可能にする。雑誌や新聞、説明書や医療情報、あるいはテキストベースのあらゆるコンテンツからSSMLを使い音声を作りだすことができることで、より豊かな体験を提供できる。SSMLは珍しい単語や複雑な用語でも正確に読み、また読み上げ音声も変えることができる。語を強調することもできるし、読み上げスピードを調整することもできる。
テクノロジー企業は最近始まったDAISYのメンバーやスタッフとの交流に、皆好意的であり、彼らのテクノロジーがDAISYコミュニティでも役に立つという利便性も認識している。彼らは、私たちとともに前進しようとしているのだ。
地域によってサービスの違いはあるが、主要なテクノロジー企業はそのサービスのカバー範囲を広げようとしているし、新たな言語をサポートし、さらなる国でデバイスを提供しようとしている。ほとんど毎月、こうした新たなサービスの発表があるのだ。
DAISYコンソーシアムのメンバーは皆、企業とのコラボレーションに意欲を示している。何がうまくいったかといった経験や、どんな障害があるかといったことを伝えたいのである。開発や巻き起こる問題を話し合うため、またテクノロジー企業の最新ニュースをシェアするため、アンケートに答えてもらったメンバーのディスカッションリストを作った。このディスカッションリストに入りたいDAISYメンバーは、こちらにご連絡をお願いする。
これからの18か月の間に、声で起動できるサービスを利用した新たな図書館サービスの可能性はますます広がるだろう。オーディオブックのオンラインでの提供や、今の利用者への新たなサービスの提供とともにこのテクノロジーは現行のサービスより声で起動できるサービスのほうがより良いと感じる人々を手助けする。私たちは、こうした新たな開発を心待ちにしている。そして、DAISYプラネットでは最新の情報をお届けしていきたい。

主要なプラットフォームに関しては、デベロパー・リソースが公開されている。興味のある方はご覧ください。
Amazon Alexa
● Google Assistant
Apple Siri
Microsoft Cortana

(3)DAISYコンソーシアム、CNIB変化の世紀賞(CNIB Century of Change Award)受賞

ライプツィヒで行われた役員会議で、DAISYコンソーシアムはCNIBから賞を授与された。

この100年に渡って、CNIBはカナダの視覚障害者の方々の生活やカナダ社会そのものに、インスピレーショナルな影響を与えてきた。この功績は、CNIBのリーダーたちやボランティア、出資者、コミュニティ・パートナー、運動の提唱者や闘志たちによるものである。彼らは、「目の見えないこと」の意味を変えるため、休むことなく努力を続けている。CNIBの百周年を記念して、「CNIB変化の世紀賞」はこうした素晴らしい人々と彼らのCNIBとコミュニティへの貢献に感謝を示すため創設された。
DAISYコンソーシアムのアクセシブルな出版と読書を世界的に推進しているその努力に対し、この賞が授与された。DAISYコンソーシアムの仕事は、図書館と情報アクセスの促進に直接的に貢献し、視覚障害を持つカナダ人たちの生活に重要なインパクトを与えてきた。

この賞を頂いたこと、CNIBに対して感謝する。そして、百周年おめでとうございます。

(4)無料のリーディングシステム…。 話が良すぎない?

10年以上前、主流の会社が、一番初めに無料のEブックが読めるソフトウェアを発表した時には、多くの人たちがこれはすぐに消えるだろうと考えた。「無料のランチなんてない」という良く言われている諺と共に育った多くの人々が用心深いことは当たり前のことである。慎重に、裏がないかと考えるのは自然なことだ。主流な世界では、それぞれのエコシステムの中で本を買う様に人々を導くことにこそ経済的な価値が存在すると考えらえているし、この価値観は大部分にあたって、今日まで続いている。いくつか営利目的のEブックのリーディングシステムがあるものの、ほとんどのユーザーはEブック販売業者が提供する無料のツールを使っている。
しかし、この考え方をそのままDAISYコミュニティで必要となるような特別なリーディングシステムに当てはめ、そうしたDAISYリーディングソフトも無料となると予想することはできない。DAISYコミュニティで扱われるのは、著作権の例外として特別な図書館で作られたEブックであり、本を売ることによって収入を得ることはできないからである。

DolphinがiOSとAndroid用の無料のリーディングシステムとしてEasyReaderを発表した時は、DAISYコミュニティのメンバーの間で再びあの「無料のランチなんてない」という感覚が共有された。Dophin自身にもユーザーや図書館から、このリーディングシステムが長期に渡って継続することを訝しむフィードバックが寄せられた。
私たちは、DolphinのNoel Duffyにそうした質問をぶつけ、そこに将来的に持続可能なモデルがあるのか伺った。

Noelはこう述べる。

この業界は、個人のユーザーに余計なコストをかけることなく最高のツールにアクセスできるようにする新しいアプローチを待ち望んでいたように思う。私たちは、ただプリント・ディ ザビリティの人たちに楽しい読書体験を提供しただけだ。それも主流なサービスを利用している人々と同じ値段で利用できるものにし、フェアにしたかったのだ。
このアプローチがその継続性に関して疑問を持たれていることは知っている。ユーザーやサービス提供者が用心深いことは理解できる。この疑問が解決できるかは分からないが、ここで 明確にしておきたい。iOSとAndroid用のEasyReaderは常に無料であること、そしてDAISYとEPUBをサポートすることを約束する。EPUBはDAISYライブラリのコンテンツの一番良い部分にも 使われる最も高いシェアを誇るフォーマットであるから。地域の図書館からの支持を受け、私たちも現メンバーをサポートし、新しくできる「DAISYオンライン提供プロトコル実装」(DAISY Online Delivery Protocol Implementations)へのサ ポートをする準備がある。私たちは現在34の図書館を直接サポートしており、毎週新たな図書館からサポートの申請がある。Dolphin websiteで、私たちがサポートしている図書館につ いての情報が公開されている。
これらのアプリにかかっているコストは、私たちの他の製品や関連サービスの利益で相殺されている。例えば、いくつかの図書館が既にサービス水準契約の可否を問い合わせてきたし、 他のプラットフォームをサポートしたブランド版のアプリケーションの値段の問合せもある。
特別なアクセシブルな図書館が私たちの最も重要なマーケットであるが、同時に個人や図書館以外の教育分野や就職分野といった団体へ販売することを目的とした機能の充実も検討して いる。こうしたところから収入を得ることになる。

特別なリーディング方法への新しいアプローチの登場の結果、図書館は彼らが提供する読書の方法を再検討するようになるし、さらに重要なことは、この分野の他の開発団体が自分たちが提供するサービスを再検討することになる。私たちの世界的なマーケットは未だ製品とサービスの幅や、様々な値段設定が十分でない。この成熟した業界における商業活動は競争的なものの、比較的、安定した環境に置かれていた。そのため、新たなアプローチの登場は新鮮であり、これまでの考え方を反省するという点で役立つだろう。新たな機会を探ることは、不安なことであるし、常に慎重に検討されなければならないが、いくつかの無料のリーディングアプリは実際に隠された料金などなく、「無料のランチ」を提供できるようだ。

DolphinのNoel Duffyにこの記事への貢献を感謝する。


以上です。

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M.A.