DAISYプラネット2017年6月号

2017/07/05

DAISYコンソーシアムのニュースレター「DAISYプラネット2017年6月号」が配信されました。http://www.daisy.org/planet-2017-06
以下、概要を日本語にしました。

トピックは次の6つです。
1.フランスでのEPUBと電子書籍エコシステムの進展
2.国際アクセシビリティ認証とは?
3.Dolphin Computer Access社30周年記念!
4.ディスレクシアの支援を向上するための情報収集
5.アラビア語の録音図書のニーズへの対応
6.M-Enablingサミット 2017: アクセシビリティは旅である

1.フランスでのEPUBと電子書籍エコシステムの進展

電子書籍のエコシステムの発展と、フランスやヨーロッパの法改正により、出版業界におけるEPUB電子書籍のアクセシビリティ対応が進んでいる。その結果、障害等により印刷物を読むことに困難のある人々も、出版の時点でアクセシブルな書籍が購入できるようになってきている。

フランス出版協会(Syndicat National de l’Edition)の標準化委員会、EDRLab (European Digital Reading Lab)、フランス国立図書館(Bnf)、フランスの文化省が協力して、フランスの出版業界におけるアクセシビリティを推進している。

フランス出版協会(SNE)は、約660の会員団体を有するフランスの出版社の業界団体である。2017年6月15日のワークショップで、標準化委員会のまとめ役のLuc Audrain氏(アシェット・リーブル社)は次のように述べた。

「アクセシブルな電子書籍の製作を、出版社がてこ入れして牽引すべき時が来た。出版の時点でアクセシブルな書籍を実現するために、高度に専門的なグループをまとめる熱い一年だった。まだたくさんの課題があるが、シンプルな本に関しては、道筋が見えてきた。
今後は、アクセシビリティは、特別な対応ではなくて、EPUB製作ツールに含め、既存のワークフローの中核の一つにする予定である。」
http://www.sne.fr/enjeux/ressources-pour-la-production-de-livres-nativement-accessibles/.

 

2. 国際アクセシビリティ認証とは?

DAISYコンソーシアム正会員のBenetechが、電子書籍のアクセシビリティの認証を行うプログラムである、国際アクセシビリティ認証(Global Certified Accessible)を考案した。BenetechのBookshareは、850以上の出版社と協力して、55万冊をアクセシブルなフォーマットに変換して提供している。

アクセシビリティが認証された電子書籍には、認証印が提供される。出版社はそれを活用して、教育関係の購入者や公共調達担当者にマーケティングできる。
意思決定者は、認証印を元に、購入する書籍が調達要件を満たす保証を得られる。

アメリカではBenetech、ヨーロッパではDedicon、イギリスではRNIB、オーストラリアではVision Australiaが認証を提供している。

国際アクセシビリティ認証は、次の規格を基本としている。
EPUB Accessibility 1.0 Specificationと、EPUB Accessibility 1.0 Techniques

Web Content Accessibility Guidelines 2.0のAAと、Introduction to WCAG and Techniques for WCAG

その他に、extended image descriptionsとMathMLに関するガイドラインも参照している。

Ingram Content GroupのVitalSource® とCoreSource®は、認証プログラムを採用予定。

エルゼビア、ハーパーコリンズ、ハーバード・ビジネス出版、マクミラン・ラーニング、ペンギン・ランダムハウス、Amnet Conversion Services、Apex CoVantage等が、認証を採用する。

 

3. Dolphin Computer Access社30周年記念!

Dolphin社は2017年6月に30周年を迎えた記念として、無償でiOS版EasyReaderをリリースした。
Dolphin社は当初、合成音声エンジンのApolloを使った、DOS用のHal(ハードウェアを音声で読み上げるスクリーンリーダー)が30以上の言語に対応し、業界の先導者となった。
1998年にはイギリスのWorcesterで、拡大とスクリーンリーダーの統合されたSuperNovaが開発され、その後、2005年には、初めてUSBドライブで持ち運べる支援技術となった。
DAISY製作ソフトのDolphinPublisherは、スウェーデンの拠点で開発された。
iOS用のEasyReaderアプリでは、世界中の21のオンライン図書館に直接接続できる。例えば、Bookshare®, NFB-NEWSLINE®, RNIB Bookshare, Legimus, NLB、Vision Australia等であり、リストはウェブサイトに掲載されている。
現在、EasyReaderのiOS版は、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ノルウェー語、スウェーデン語で提供されており、他の言語へも対応予定である。EasyReaderは、ボイスオーバーと、iOS用の点字ディスプレイに対応している。ファイルのサイドロードは今後対応予定である。EasyReaderのAndroid版は2017年の夏頃リリース予定。EasyReaderはアプリのプラットフォームとしても活用でき、事例としてはスイスのSBSのLeser Plusがある。

 

4. ディスレクシアの支援を向上するための情報収集

ヨーロッパ・デジタル・リーディング・ラボ(European Digital Reading Lab /EDRLab)が、障害のある人たちの「読書」の多様化の取り組みの一環として、ディスレクシアに関する取り組みを始めた。

EDRLabのメンバーであるMobidysは、ディスレクシア向けのアクセシブルな書籍の製作に最も活発に取り組んでいる出版社の一つである。EPUBによるサポート以外にも、ソフトウェア、ブラウザ、アプリ等、様々なディスレクシア向けのソリューションが市場にある。
EDRLabの目標は、次のとおりである。

  • EPUBに関連するディスレクシア向けの製品についての情報収集
  • ディスレクシアのニーズに対応したEPUBの標準化
  • ディスレクシアのニーズに対応したEPUBの閲覧環境の開発
  • 製作ツールの開発の可能性

EDRLabでは、現在、ディスレクシア対応の製品として次のものを把握しているが、他にあれば、メールまたはTwitterメッセージ(@lucmaumet)で製品情報を募集中。

ブラウザ:

EPUB非対応の再生ソフトやアプリ

EPUB対応の再生ソフトやアプリ

 

5. アラビア語の録音図書のニーズへの対応

ここ数年で、北欧ではヨーロッパ以外の言語の録音図書のニーズが増えている。2015年にアラビア語とサーミ語の録音図書製作のコラボレーションが始まった。参加図書館は次の通り。
フィンランドのCelia, デンマークのNota, ノルウェーのNLB, アイスランドのHljodbokasafn そして、スウェーデンのMTM

これらの図書館はすべて、アクセシブルな書籍と出版に特化した図書館である。2017年6月までに、2つのプロジェクトで、25のアラビア語と、6のサーミ語の録音図書を製作した。

北欧諸国の統計によると、各国の人口の約20%が外国のバックグラウンドを持つ。また、約6-8%の人口が読みの困難を持つ。このことから、北欧では、アクセシブルなメディアへのニーズを持つ、外国のバックグラウンドを持つ人口が多いと考えられる。アラビア語が母国語である難民が北欧には多い。
北欧の各図書館は、このニーズに対応するために協力することを決め、各図書館が5冊ずつ製作して25冊のアラビア語の録音図書ができた。また、Celia、NLB、MTMによって、北部の先住民族の言語であるSami語の録音図書も6冊作成した。

MTM、Nota、NLBは、アクセシブル・ブック・コンソーシアムAccessible Books Consortium /ABC)のグローバル・ブック・サービスのメンバーでもある。このサービスは、アクセシブルな書籍の国際的な検索と国境を越えた貸借を容易にする。現在55の言語のアクセシブルな書籍がある。参加は無償である。
参考:Reading by Listening [Multilingual Month].

 

6. M-Enablingサミット 2017: アクセシビリティは旅である

アクセシビリティは旅である。旅には協力できる献身的な友が必要。異なる専門知識やスキルを持つ人との旅は、おもしろく、やりがいがある。状況によって旅程が変わることもあるが、協力して乗り越えられる。

M-Enablingサミット 2017で「電子出版におけるアクセシビリティの進展」のセッションが開催された(2017年6月14日 ワシントン)

Varju Luceno氏の、DAISYコンソーシアムのインクルーシブ・パブリッシング・ハブの紹介の後、

Betsy Beaumon氏(Benetech代表)による、DIAGRAM CenterBuy Accessible、 Born Accessibleの紹介と、国際アクセシビリティ認証の紹介があった。

Rick Johnson 氏(VitalSourceの製品戦略副代表)から、VitalSourceの教育教材と閲覧プラットフォームのアクセシビリティについて。また、EPUB 3 Community Groupへの参加の呼びかけがあった。

Steve Tyler 氏( RNIB(Royal National Institute of Blind People)のイノベーションと開発長)から、録音図書開発の初期から、マラケシュ条約の推進に至るまでの話と、規格の開発から、把握しきれないほどの時間をかけた録音の努力によって、近代的でパワフルな機器を活用してRNIB図書館をポケットに入れて持ち歩けるようになるまでの素晴らしい進展について講演があった。 RNIB library in your pocket

Peter Korn (Amazonのアクセシビリティ・アーキテクト)は、手を使わない音声操作技術Amazon Echoによる読書を含む新技術について紹介した。Amazonは機器のアクセシビリティの向上に意欲的である。引き続き、イギリスのRNIB やアメリカの全米視覚障害者連合 (National Federation of the Blind)を含む複数の団体と協力していくと述べた。
Kindle accessibility improvements continue

アクセシブルな出版、読書、発見は続きます。私たちとの旅をありがとうございます。

以上です。
お気づきの点などあれば、お知らせください。

M.M.